沖縄でマンションを買うならどっち?所有権vs定期借地権?
沖縄では当たり前?「借地権マンション」

沖縄の不動産情報誌をパラパラとめくっていると、驚くほど良い立地なのに、周辺相場よりグッと安い価格がついたマンションを見かけることがあります。
「なぜこんなに安いの?」と詳細を見てみると、そこには「借地権」の文字が。
本土では「土地も建物も自分のもの(所有権)」が一般的ですが、沖縄では米軍返還地の開発や、先祖代々の土地を手放したくない地主さんの意向により、分譲マンションでも「土地は借り物」というスタイルが定着しています。
今回は、沖縄特有の事情を踏まえ、所有権と借地権、どちらが「賢い買いモノ」なのかをプロの視点で徹底比較します。
メリット:憧れの「オーシャンビュー」や「人気地」を予算内で手に入れる

沖縄で借地権マンションを選ぶ最大のメリットは、「圧倒的な立地の良さ」と「手頃な価格」の両立です。
那覇市の新都心エリアや、北谷などの海岸沿い。本来なら坪単価が高騰して手が届かないような場所でも、借地権であれば所有権に比べて2割〜3割ほど安く設定されています。
メリット部分からおさらいしてみます。
購入ハードルが下がる
土地代がかからない分、浮いた予算で内装を豪華にしたり、憧れの広い間取りを予算内で選ぶことが可能になります。
税金が抑えられる
土地分の固定資産税・不動産取得税がかからない(建物分のみ)のは、毎年の家計に嬉しいポイントです。
「立地」のプレミアム感
普通なら出てこないような美しく区画整理されたエリアに住めたり、オーシャンビューの立地も沖縄ならではの特権。こうした「場所の魅力」を安く買えるのが借地権の強みです。
「資産を子どもに残すこと」よりも、「今の生活の質を最大限に高めること」に価値を見出すライフスタイルの方にとっては、借地権マンションは「所有」という概念に縛られず、「利用」という観点から非常に合理的な選択となり得るかもしれません。
デメリット:毎月の「地代」と、「更新」問題

一方で、借地権には特有の「見えないコスト」や「期限」のリスクがあります。
月々の「地代」が発生
住宅ローン以外に、地主に払う「地代」が必要です。これが月々2万、3万と積み重なると、意外と家計を圧迫します。
「定期借地」か「旧法借地」か
- 定期借地権: 50年〜70年経ったら更地にして返さなければなりません。まさに「カウントダウン」です。
- 旧法(普通)借地権: 更新が可能ですが、更新のたびに多額の「更新料」がかかるケースがあります。
出口戦略(売却)の難しさ
沖縄でも「借地権は売りづらい」というイメージを持つ方は多いです。特に残り期間が短くなると、銀行が次の買主にローンを貸してくれず、価格を大幅に下げないと売れなくなるリスクがあります。
また、所有権マンションでは発生しない「解体準備金」というものも存在します。この費用も毎月必要になってきます。
「解体準備金」は、将来、借地期間が満了した際に建物を更地に戻して地主に返還するための費用を積み立てるもので、これも無視できないコストとなります。
中には毎月、解体準備金を徴収していないマンションも存在します。しかし、『解体準備金の積立がないからお得』というわけではありません。
積立がない物件は、残存年数が迫ってきたときに急遽徴収が始まるケースもあったり、将来の売却時に買い手から『最後に解体費用がかかるんですよね?』と突っ込まれ、結局最後、値引きで対応せざるを得なくなる。そんな展開も、実は十分にあり得る話なのです。
最初から透明性を持って積み立てている物件の方が、かえって中古市場での評価は安定するものなのですよね。
さらに、住宅ローンの面でも注意が必要です。
借地期間の残存年数によっては、住宅ローンの審査が厳しくなることも考えられるため、事前の確認が不可欠です。
ズバリ、いくら安かったら「買い」か?

結論からお伝えします。
所有権マンションに比べて、「価格が30%以上安い」なら、借地権もアリです。
借地権のマンションとはいえ、すべて一律ではなく、「地代」が高めに設定されたり、途中で値上がりしたりするケースもあります。
物件価格が2割安い程度では、35年間払う「地代」の合計額で、所有権との差額が消えてしまうこともあり得ます。 「3割安ければ、その浮いた分を資産運用に回して、将来の住み替え資金を作れる」というのが一つのラインになるのではないでしょうか。
【所有権vs借地権】35年間のトータルコスト徹底比較
条件を揃えるため、以下の想定で計算します。
- 住宅ローン: 35年、金利1.0%(元利均等、フルローン)
- 固定資産税: 所有権は土地+建物、借地権は建物のみ(土地分が約6割と想定)
- 借地権特有コスト: 地代 15,000円/月、解体準備金 5,000円/月(計20,000円/月)
35年間のトータル支出比較表
| 項目 | 所有権(5,000万円) | 借地権(35,000万円) | 差額 |
| ローン返済総額 | 約 5,928万円 | 約 4,150万円 | 借地権が 1,778万円 安い |
| 固定資産税(35年分) | 約 438万円 | 約 175万円 | 借地権が 263万円 安い |
| 地代・解体金(35年分) | 0円 | 840万円 | 所有権が 840万円 安い |
| トータル支出 | 約 6,366万円 | 約 5,165万円 | 借地権が 1,201万円 安い |
支出が1,200万円安く済んだ借地権、35年後の「資産価値」は?
「借地権の方が1,200万円も手元にお金が残るなら、借地権の方が絶対いいじゃん!」と思うかもしれません。しかし、ここからが「不動産の出口戦略」の面白い(そして怖い)ところです。
住宅ローンを完済した35年後、それぞれの物件がいくらで売れるかを予測してみましょう。
1. 所有権(5,000万円)の35年後
- 土地の価値: 沖縄の好立地であれば、土地の価値は下落しにくい傾向にあります。購入時の土地価格が3,000万円(60%)だった場合、35年後も同程度の価値を維持している可能性があります。
- 建物の価値: RC造マンションの35年後は、建物価値はほぼゼロに近いですが、管理状態が良ければ数百万円の価値は残ります。
- 手残り:約 3,000万円〜3,500万円
2. 借地権(35,000万円)の35年後
- 土地の価値: 0円(地主のものなので)
- 建物の価値: ここが重要です。残り35年間の「住める権利」は残っていますが、定期借地権は期限が近づくほど価値が下がります。また、35年後の買い手がローンを組むのが難しくなるため、売却価格は大きく制限されます。
- 手残り:約 800万円〜1,200万円(予測)
結論:どちらが「賢い選択」なのか?
トータルの「収支」を計算してみると、意外な結果が見えてきます。
- 所有権: 「6,366万円払って、3,000万円の資産が残る」= 実質コスト 3,366万円
- 借地権: 「5,165万円払って、1,000万円の資産が残る」= 実質コスト 4,165万円
このシミュレーション結果だけを見ると、「所有権の方が800万円ほどお得」ということになります。
では、なぜ借地権を買う人がいるのか?
それは、借地権が「今使える自由な現金を最大化してくれる」からです。
- 毎月のゆとり: ローン返済が毎月約4.2万円安くなります。この浮いたお金を教育費や家族旅行、あるいは「資産運用(新NISAなど)」に回し、年利3%で運用できれば、35年後には大きな資産に化けている可能性があります。
- 立地の妥協をしない: 5,000万円では郊外しか買えなくても、3,500万円の借地権なら那覇の超一等地に住めます。その「時間の価値(通勤短縮など)」は、金額には換算できない大きなメリットです。
- 負動産リスクの回避: 70年後に更地にして返すことが決まっているため、出口が見えない「老朽化マンションの建て替え問題」に巻き込まれることがありません。
賢い買い方のポイント
今回のケース(5,000万vs3,500万)のように、「所有権の7割程度の価格」であれば、借地権は非常に強力な選択肢になります。
逆に、価格差が15%程度(4,200万以上など)しかないのであれば、毎月の地代負担を考えると所有権を選んだ方が無難かもしれません。
「資産として残したい」という昭和の価値観か、「今この瞬間の生活の質を最大化したい」という令和の合理主義か。あなたなら、どちらの「損得勘定」を選びますか?
「土地は子孫に継承するもの」という意識が強い沖縄において、借地権マンションを選ぶのは勇気がいるかもしれません。
しかし、今の時代、古くなったマンションの建て替え問題(住民の合意形成)は全国的な悩みです。 期限が来たら更地にして返すという潔さは、ある意味「次世代に負債を残さない」という、沖縄の新しいライフスタイルと言えるかもしれません。
「所有」にこだわって郊外の不便な場所にするか、「利用」と割り切って最高の立地を借地で手に入れるか。あなたのライフプランに合わせた「納得の損得勘定」を一緒に考えてみませんか?




